「田中新会長よりのご挨拶」

ご挨拶

 日本神経科学学会の2014〜2016年の会長を拝命した田中啓治です。理化学研究所脳科学総合研究センターで勤務しています。会長という重要な任務をいただき緊張していますが、精一杯務めさせていただきます。以下は日本神経科学学会に対する私の考えの一部です。学会の運営は理事会の合議、さらには総会の合議によるものですから、私の考え=学会の考えではないことを前提にお読みください。
 神経科学は発展しつつある学問分野であり、発展とともに多くの学問分野と関係を持ちつつあります。これからもこの発展は続くでしょう。お互いに学び合いながら連携を強めていくという意識でやっていきたいと思います。この観点との関係では、2016年に国際心理学会議と連続して学会大会を持つことは良い機会です。日本では北米に比べ心理学と神経科学の融合がやや遅れ気味であったように思います。2016年大会に大いに期待します。それとともに、これまでも努力してきた分子生物学、医学臨床系との連携にもますます努力していきたいと思います。
 学会は会員の研究活動を助けることが使命であり、そのためには年次大会をますます充実させていくことが学会の活動の中心と思います。大会は真剣勝負の場です。それぞれの研究室で発表を十分に練り上げ、しっかりと発表する。考えられる質問や批判についても答えを考えておき、質の高い議論を展開する。また他の研究室からの発表に学ぶべき内容を探す。大会はまさに研究室の総合力を結集した勝負の場です。大会に参加している間は、知的刺激を受けて、研究に関するアイデアが良く湧くように思います。大会は個人の勝負の場でもあります。立派な発表とそれに続く議論だけでなく、他の発表への質問や批判によりセッションに貢献する。質問や批判をしながら聞けば理解は深まります。また、リーダー達は良い質問や批判をする人の名前を覚えます。真剣で積極的な態度は、結果として良いポジションやグラントを得ることに繋がることもあります。
 JNSは大会の国際化に取り組んできました。これを継承し発展させていきたいと考えています。1.3億の人口しか持たない日本が国の中だけで神経科学をやっていくことの限界は明らかです。日本の神経科学者は世界に活躍の舞台を求めなければならない、また日本の学会大会そして研究機関に多くの外国からの研究者の参加を得ていかなければならない。そうでなければ、日本の神経科学が世界のトップを走り続けることはできないと思います。日本神経科学学会はすでに十年近く英語を正式言語として大会を行ってきました。セッションに外国人が一人もいないときなど、英語で議論する不自然さがありますが、将来を見据えて、ぜひこれを堅持し発展させていきたいと思います。質の高いシンポジウムを多く含むことが大会を魅力的にします。北米神経科学学会(SfN)やヨーロッパ神経科学連合(FENS)の大会のシンポジウムを凌駕する内容のシンポジウムを組んでいくことが、世界、特にアジア、からの参加者を引きつけていく武器だと思います。会員の皆さんからの素晴らしいシンポジウム提案に期待します。
 会員の皆さんにはJNS大会において積極的な役割を果たすとともに、SfNやFENSの大会を初め、国際シンポジウムなど国際的な会にも事情の許す限り参加し、研究成果を訴え、堂々と議論してきていただきたい。さらに一般演題での発表に留まらず、ぜひシンポジウムでの発表を目指していただきたい。そのためには他人が企画したシンポジウムに呼ばれるのを待つのではなく、自分でシンポジウムを企画提案するのが早道です。過去3年間国際連携担当の副会長を務め、SfNやFENSの大会での日本で働く研究者のシンポジウム講演者を増やすよう申し入れましたが、日本からの提案が大変少ないということをあちら側から指摘されました。採択率では差はないと言うのです。会員の皆さん、ぜひSfNやFENS大会のシンポジウムをチェアーとして提案してください。採択されるためにはシンポジウム講演者リストの中での大陸および性別の多様性が必要です。ひとつのシンポジウムに含める日本の研究者は1名です。シンポジウムを一緒に提案する外国の仲間作りをしてください。
 日本は狭い国です。経済の浮き沈みもあります。日本の経済だけに頼っていたのでは日本の神経科学の発展には限界があります。日本人研究者がポジションを求めて世界に跳び出していく時期であると思います。米欧へポストドクに行くだけでなく、米欧で研究室を持つ、また発展しつつあるアジアで研究室を持つ方が多数現れることを期待します。自分ができなかったことですが、これからの日本にぜひ起こって欲しい、そしてそのために学会としても何かの援助をしたいと思います。
 国際的学術誌であるNeuroscience Researchの発行は日本神経科学学会にとって年次大会に継ぐ大事な事業です。ますますの発展に努力します。また、理事の先生方に負担を掛けずに学会を運営するため、学会事務局の強化にも引き続き務めたいと思います。
 最後になりましたが、会員あっての学会です。会員の皆様の学会を支える活動に大いに期待するとともに、理事会への希望、批判などがあればどうぞお寄せください。日本の神経科学の更なる発展のために一緒に頑張りましょう。

田中啓治